こんにちは!獣医師の竹花です。

近頃ハリネズミさんの患者さんが増えてきたように感じます。

実際、世間のメディアやペットショップでもハリネズミが取り上げられることがしばしば。

なので今回はハリネズミの疾患で最も来院が多いダ二疾患について、実際の症例を踏まえ紹介していきたいと思います。

 

ハリネズミのグラちゃんです。

自分で眼を掻いてしまい、眼から出血が止まらないとのことで来院。

写真のとおり結膜が腫れ上がり、眼球が見つからないレベルでした。

聞けば、先日も眼赤くなり他院で目薬を処方していただいたとのことです

 

今回はその時よりひどく、結膜の腫脹・眼球の欠損がみられたので眼球摘出とその瞼の縫合のOPEをすることになりました。

さいわい眼球の受け皿である眼底に大きな損傷や感染は見られなかったので、

命にかかわる可能性は低いと判断できました。

単純な縫合では糸の部分の圧力が強く、瞼が裂けて開く可能性があったので、

その圧力を柔らかいチューブを使い減張させる方法で縫合しました。

麻酔も無事に覚め、グラちゃんは無事退院できました。

 

このとき眼をかいた原因として、ダ二症も疑いもありましたが、その検出がみられませんでした。

しかし、後日、再び結膜の腫脹を訴え来院。

続く結膜の腫脹の原因を究明すべく、再度皮膚検査を実施し、

前回見られなかったダ二の検出をすることが出来ました。

今回の腫脹は眼球の損傷もなく、眼球も瞼の中に陥入することができたので縫合まで至らず、痒みのコントロールとダ二の駆除により治療を進めました。

 

ダ二の駆除スケジュール後のグラちゃんです。

現在痒みもなく、左目の眼球だった部分は肉が盛り上がり補てんされ、右目は順調に回復し正常に戻りました。

本人もスンスン鼻を鳴らし、たいへん元気だそうです。

 

今回のことも含めダ二の検出が必ずしも可能という訳ではありません。

多数の寄生の場合は肉眼で見られることもありますが、皮内に潜在することもあるので

ハリネズミをはじめて家に迎え入れる場合は一度検査と予防もふくめた駆虫を当院では勧めます。

 

検査でダ二の検出がみられた場合、セラメクチンの塗布とイベルメクチンの複数回投与によって行われます。セラメクチンの投与のみでは、飼育環境中のダ二を駆除しきれず再発するケースが度々みられます。そのためその複数回投与のスケジュールを行うにことによって完全な駆虫と再発の阻止を実現します。

 

ダ二症を放置すると痒みによる症状が今回の眼以外に、手指や耳や体幹・陰部に咬傷や創傷ができ、出血や感染がみられるので、そのような症状がみられたら、なるべく早めに病院への来院を勧めます。